ガルシア マルケスについて書く
百年の孤独を読んだ。
新潮社より「ガルシア=マルケス全小説」が刊行されている。
どれも白地の紙にごつい筆を使って線が引かれた綺麗な装丁の本。
以前より気にかかっていた。新潮社文庫にもあるのを知っていたが、
購入するにまではいたらなかった。
また、立ち読みした印象でも、やたらに長い南米の人名が並んでいるのに
うんざりして読めそうもないと思って、敬遠していた。
しかし読んだ。
心境が変わったのもあるだろうが、少し落ち着いて、淡々と、しかし緻密に
書き並べられていく、人、人、人の物語を味わうことができるようになって
きていた。
物語のキーワード、ドラマの絶頂、話の要旨ではなく、
その話が紡ぎあわされていく、その折り目を丹念に追っていくような
語りの、この物語がとても気に入った。
通勤の時間にしか読めなかったが、確かにこの本は、20分に一回くらい
ドラマがある。
ガルシア=マルケス恐るべしと感服するのは、その豊かな物語の図太い
線の交差である。
真ん中に図太い線がある。ただしその線は複数からなっている。
そして、また別から横糸が入り、補強され、豊かになっていく。
そのプロセスが繰り返されていく。
僕は、町娘のメメがある朝に洗濯物のシールに包まれて空にさらわれていく
シーンを読んだ朝を忘れない。
どうしてこんなに美しい物語が書けるのか。
この人の物語には、到底かなわないと思った。
本を読む人で、作家になりたいと思ってみた人は多いに違いないだろうが、
人に物を語ることが好きで仕方がない、話さずには、語らずにはいられない
といった欲求を強くもったことがある、という人は少ない。
ガルシア=マルケスに感服するのは、そのおもしろい話を語りたいという
欲求の強さなのではないかと思う。
続けて、「物語の作り方」を購入して読む。
こちらでは、シナリオライターとしての基本的なことのを、言って聞かせる
ガルシア=マルケスの姿を見ることができる。
また、この本は確かにシナリオライターの卵の作品を複数のプロたちが
評価し、洗練させていくという討議形式の本で、ベースとなった生徒の作品への
コメントから、別のよりよい物語へと(当然、ある決断のもと、あるアイデア
を捨象している)推敲されていくプロセスを知ることができるので、
物語を書きたいと考えるための技術的な参考にもなる本であると思う。