monomadoのブログ

本を買う話とか、読んだ本の話とか。あと時々、旅行の話を。

十牛図―自己の現象学 (ちくま学芸文庫)

十牛図―自己の現象学 (ちくま学芸文庫) を読んだ。

禅にある、悟り?のプロセス、自己発見のプロセスを描いた10の牛と牧人の絵について、上田閑照が解説を付したもの。

およそ一ヶ月半前に読んだ。

忙しい最中であったが、「何をしているんだろう」といった気分があったので、読みたくなった。
初読ではなく、以前に読んでいたが8枚目の真っ白な絵と10枚目の牧人とおじさんの絵の意味が気になっていたので。

「何をしているのだろう」という時に、自分がどのあたりにいるのかを考える時のものさしとして、よくニーチェの「ツァラストラハはこう言った」のラクダ、ライオン、幼児の例えをよく思い出すことがある。

仕事で忙しい時ほど、自分はいま、なんでも背負い込むラクダのところにいるのだと感じる。忙しさのピークを迎えると、現状に対して批判的になり、破壊的になる。そして、今の仕事の進め方に対して改善を加えてみる。(あるいは耐えることも多い)ラクダ⇒ライオンまではよく繰り返すのだけれど、幼児の状態にはなったことがないと思う。(そもそもニーチェによって描かれる図式にはラクダとライオンを繰り返すような図式はないのだけれど)

十牛図の8枚目。それは真っ白な図で描かれる。
牛(自己)を見失い、探す牧人が牛を見つけ、帰宅した後に、牛を忘れ、そして真っ白になるのが8枚目である。

もう一度、話を最初に戻して、自分の仕事の中でのプロセスに直して考え直す。
(6までが仕事に例えることができている)

1:自分がやりたいことができていると思っている。
2:仕事が自分の思っている以上のこと、以下のこととなる
  ⇒仕事と自己との距離が生まれる(牛が逃げる)
3:仕事をもう一度、考え直す。(牛の足跡を追う)
4:解決の糸口を見つける(牛の姿(一部)を発見する)
5:再会した仕事に取り組む。試行錯誤する(牛の首輪を掴み、なんとか引っ張り込もうとする)
6:仕事がうまく回り始める(牛とともに元の場所に帰る)
7:問題となっていた仕事、トラブルを忘れる(牛を忘れる 図に牛はいない)
8:真っ白になる。
9:世界が自ずからなるものであることを知る。
10:自然だけでなく、人の中にあって、人との中に自己のありかを知る

8、9、10がどいういった心境かわからない。

幼児になること、真っ白になること、世界の中にあることを受け入れること。
そして10枚目。再び人の中へ帰っていくこと。

なのかとぼんやり考える。
そんな気分になったからなのか、3月のはじめにもらった7連休で「青春18きっぷ」など買って一人旅にでかけたのは、やはりこの本を買ったからなのかもしれない。
いずれにせよ、この本は『深夜特急』という現役の本に対しては、老年の本という感じではある。

『深夜特急』を読んだ時の気分を思い出し、あの時思い描いたままではないにせよ、いまだからできる旅にでかけたくなる本だと思う。