monomadoのブログ

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サンタクロースの秘密 (serica books)

サンタクロースの秘密 レヴィ=ストロース 中沢新一 せりか書房

レヴィ・ストロースの「火あぶりにされたサンタクロース」と中沢新一の「幸福の贈与」を所収。

レヴィ・ストロースの論文は、1951年フランスのディジョンで起きたサンタクロースが大聖堂の前で火あぶりにされるという事件をとりあげている。
この論文によれば、そもそもクリスマスにサンタクロースが子供にプレゼントをあげるという習慣そのものが、「異教的」な習慣であるそうだ。現在、クリスマスの行事といえば、誰もがキリスト教のお祭りであると知ってはいるものの、キリストとサンタクロースの関係について知るものは少ない。なぜなら、サンタクロースとキリストの間にはそもそも関係がないからなのだ。
なぜ、サンタクロースは火あぶりにされなければならないのか?それは、本来のキリストへの信仰を濁す存在であるからで、サンタクロースの来歴がそもそも異教から来るものであるからだ。
それは、世界大戦の中でアメリカ兵が持ち込んだ習慣であると、レヴィ・ストロースはとらえていた。

異教的であることと同時に、それは贈与の祭りであり、ある贈与論としての一形態として極めて興味深いのが、現代にあるこのクリスマスという行事なのである。
もともと、異教を由来とする贈与のクリスマスは、死の世界へとつながる側面をもっている。レヴィ・ストロースはハロウィンという習慣とつなぎ合わせながら、死者と生者の交感といしてのクリスマスを位置づけてみせる。
ハロウィンは死者の蘇りであり、クリスマスは死者への返礼(贈与)である、と。

死者の役割は、子供が担う。それは、まだ生者の秩序以前ゆえに死に近い存在であるゆえ。
私は、ハロウィンの来歴そのものに詳しくないが、死者の蘇りとしてのハロウィンというのがとても合点のいく説明であると理解した。(なぜ、おばけのかっこうをした子供が贈与することを強要するのか?)
クリスマスにおいても同じく、大人(生者)から子供(死者)への気前のいい贈り物が送りあたえられる。そして、この交感において、一年の豊穣、生存への死者への返礼と感謝を示していると説明される。

こうした贈与社会への反抗としての、サンタクロースを火あぶりにするというカトリックの聖職者の行いは、まさに、邪教的な方法、すなわち火あぶりによる、生贄の儀式を模した形で、とても皮肉な形で、旧慣習から、アメリカ主義的な資本主義社会への反抗という形で示されたのだと締めくくられる。