monomadoのブログ

本を買う話とか、読んだ本の話とか。あと時々、旅行の話を。

若い小説家に宛てた手紙

若い小説家に宛てた手紙

パルガス・リョサの小説の味わい方を講じた本ということだろうか。
作家が書く、小説の面白さみたいな本はいくつか読んだけれど、この本は、小説家に宛てられているだけのことはあって、作家がどのように物語を作るにあたって工夫しているのか、ということをとても順序だてて、わかりやすく説明してくれている。

読者であるということだけであれば、小説に対して、作家が意識的にか、無意識的になのか、少なくとも本と読者の間にある一定の効果と影響の関係があると思う。作家としての努力は、仮に読者において作品は上演されるのだとしても、いかに読者にその効果を発揮するために、どのような形で物語を表現するのかという話になる。

なので、ここは作家でないにしても、この本を作家の隣で、そうやって作るのかなるほどとテクニックを盗むようなつもりで読むのがよい。
すると、わかってくるのが、何故作家はここで、物語を出来事の最後から語り始めるのか、出来事を思い出として「私」に語らせるのかといった、出来事を説明することができたその他多くの可能性から、作家があえて選んだその形式の意味について、とても意識的に、慎重的に読むことが大事なことであることがわかってくる。

ガブリエル・マルセルの『物語の作り方』を読んでいても、作家という仕事は、何もないところから作るにして、とても職人的な努力も必要なのだということを教えてくれる。

こういう本を読んだあとは、作家の工夫なんかにも考えも膨らませながら、読んだりするのが楽しい。