性についての探求
- 作者: アンドレブルトン,野崎歓
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2004/07
- メディア: 単行本
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まず率直な感想。この人らおもしろい。
芸術家集団としては特A級の人たちが集まって、性についてまじめに話しあう、というこの本。
気になるのは、アントナン・アルトーが出席した第六回(上掲書 p144〜)。
うまく噛み砕けないが、アルトーとブルトンの間にある性と愛の考え方が気にかかるところ。
アルトーは性的欲求と愛を区別するが、ブルトンは愛と性愛を結びつけて考えようとしている。ブルトンは本書の随所で、性的快楽とは精神的な満足、喜びとして主張しているところ。(これがブルトンの性格の中でどういう意味をもつものであるかを、ブルトンの作品の中から、あまり読んでもいないので、説明することができないが、たぶん意味はあることだと思っている。
このアルトーとブルトンとの差異については、バタイユが、叡智的な世界に見せられているブルトンを批判した(『「老練なもぐら」と、超人および超現実主義者なる言葉に含まれる超という接辞について』)ところと重ね合わせて、アルトーVSブルトンという構図で、何か考えるヒントにならないかと思ってみたりすることろ。
あと、メモとして、バタイユに対する言及の箇所があったので、メモしておく。
ブルトン (中略)ジェンバックはバタイユのアイディアをどう思う。彼は大嫌いな奴をひどい目にあわせようと、自分の先生の・・・・・・を入手して・・・・・・
ジェンバック どうしてそれがバタイユにとって仕返しの手段になったのか、僕にはわからない。精液について、別にこれといった意見はない。
ユニック 素晴らしく洗練された仕返しが。もしぼくがバタイユの立場だったら、とてもそんな勇気は出なかっただろう。
ブルトン この男に自分を同一視できるか?
デュアメル できるね。
タンギー できない。
ナヴィル あまりに不確かな話で態度を決められない。必ずしも目的が達成されたとは思えないね。
モリーズ 横紙破りな、美しいことだと思う。
ブルトン ぼくは、この話は大好きなんだ。絶対の信頼というものにかかわる、こく稀な話の一つだと思う。女が男に与えることのできるもっとも大きな愛のあかしがここにある。
バタイユ自身の事件については原注がついていたが、「この件に関して他に何の説明なし。」とあり詳細は不明。バタイユはいったい、何をしでかしたのか、とミーハー的に気になるところと、ブルトンがバタイユの行為を肯定しているところにも注目したいところ。