monomadoのブログ

本を買う話とか、読んだ本の話とか。あと時々、旅行の話を。

モダンタイムス ゴールデンスランバー 重力ピエロ つまりは伊坂幸太郎

読んで2ヶ月くらい経つ。

ちょうど5月の初旬から読み始める。その頃は2年近くたずさわるプロジェクトの2回目の大きなリリースがあったタイミング(GWで切り替えだった)。

切り替え後には、毎朝7時に出社せねばならず、会社の近くに住む方の家に居候生活を2週間ほど続けた。
幸い、リリースはうまくいったので7時出社の早番ということもあり、夕方15時には帰ってもよいことになった。
おかげで駅前のジュンク堂によっては、喫茶店で読書という、陶酔の2週間を送ることができた。

この1年間は、いまいるプロジェクトのおかげで大変な目にあっていた。特に10月、11月がピークで、SEならではな3徹、4徹を繰り返し、その後は夜間監視当番をおおせつかって、年末ギリギリまで深夜作業の人となる。

そんなこんなで、少し落ち着き始めた頃に、最近、ミステリーとか読んでいないし、何か久しぶりに読んでいないから読んでみようと思って手に取ったのが「モダンタイムス」である。
(確か、何かの雑誌の書評(お薦め)に載っていたので、読んでみたくて買ったと思う。)

大抵の場合、著者から本を手に取るタイプなので、物語が面白うそうという理由で本を手に取ったがそもそも珍しい。というわけで、著者についての情報一切なしで、ただただおもしろそうという理由で手に取った。

モダンタイムス (Morning NOVELS)

モダンタイムス (Morning NOVELS)

何が最初に気になったのか、それはSEの話であること。しかもミステリーで、おかしな顧客からの依頼を詮索していったら、とんでもないことに巻き込まれていくという話は、身近にもおもわれて、気になった。あとがきを読むと、これは漫画雑誌「モーニング」に掲載されていたとのことで、その発表の場所自体にも興味が持てた。というのも、モーニングといえば、浦澤直樹とかが書いている雑誌なわけだから、お話がおもしいものに違いないと思えたこと。また、漫画雑誌に掲載される活字なわけだから、やはりお話そのものの面白さで引っ張っていかなければならないところを、やりきっているわけだから、やっぱりおもしろいんだろうと思うこと。

それで、実際、読んだらどうっだたのか、と言えば、久しぶりにミステリーとか謎をおいかける式の話を読んだものだから、とめられなくなる始末で、翌朝早起きしないといけないのに、読み込んでしまう。

話のあらすじとしては、SEをしている主人公が、失踪した変な先輩の担当を引き継ぐ。顧客自信も、秘密が多く、そもそも何をしている会社かわからないような会社。仕事自体は、オンライン画面の変更をする程度で、業務内容などは知る必要もないような比較的簡単な仕事。であったが、画面のプログラムにある暗号化されたソースのせいで、コンパイルが通らない。コンパイルを通さないといけないという仕事上の都合と、そもそもこの謎はなんなのだ、ということへの興味から、主人公は、余計なものに首をつっこんでいってしまうという話。

別に話の筋には、不条理なくらいに強い主人公の奥さんが、主人公の浮気をうたがい、主人公を追い込んでいく話と、追い込む役目をになった、拷問を仕事とする怖いおじさんの話。

そして、謎そのものの鍵となる、とある小学校で起こった事件の話と、その話にまつわるある村の話。

この三つが物語りの筋にあって、語りは主人公の視点から語られている。

読後の感想としては、三つの筋が絡まっていき、一つになっていく最終部まで、おもしろく読めた。語りのトーンはやや落ち着いており、他でも評されているように、村上春樹的な感じはあると思う。本来は具体的に文を並べてその場所を特定するなどの比較があるべきだけど、そこまではしないが、一つ思うことは、女の人の話方が似ているように思うところだろか。例の不条理なまでに強い妻の性格としゃべり方(強気で、あっさりして、残酷なところ「でも、いくらかわいそうと思ったところで、誰も助からないじゃない」風の冷酷なところと、一方で、手を差し伸べることができるところには、やたらやさしいところ)ではないかと思う。
読後に思うことは、この物語の本筋は謎解きよりは、主人公と妻の話が気になっていくところだろうか。結局、物語の中心にある謎の究明というところは、最後にはほとんどどうでもいいようなものといった風に扱われているようにも思う。また、そもそもこの謎の事件が発生する前と、そして解決した後にも、この不条理に強い妻と主人公との関係が気になるものとして残っていく。
なんで、この不条理に強い妻は主人公と結婚しているのか、
これがわからない、というこの、未消化の中で、なんかそれもいいかなと思えるところが、この作家の持ち味なのかもしれないと思ってみたり。


ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

続いて、読んだのは「ゴールデンスランバー」。モダンタイムスは二日で読んだので、三日目にはこの本を手に取っていた。

話は仙台の首相パレードで、テロが起こる。その犯人に陥れられた主人公が、どうやってこの窮地を脱していくのかという話。

帯には伊坂的娯楽小説突抜頂点とかかれているが、確かに娯楽というジャンルでみるとこの人の中では一番面白いものと思う。物語としての、なぜ?を追いかけるところと、追われる身として逃げること、この両者は反するのだけど、それをなんとかやり遂げようとする主人公の妙策に引き込まれていく。クライマックスは、クライマックスらしく派手になっているし、映画にしたら面白そうとも思える。

この伊坂さんの作品はけっこう映画になっているみたいだけど、確かに日本映画が好みそうな話が多いのは納得できてしまったりする。

『重力ピエロ』
『ラッシュライフ』

とか。

『重力ピエロ』の広告に映画化不可能といわれた作品の映画化と描かれていたときには、あほか、と思ってしまったけど、どうせなら、ゴールデンスランバーを映画化してくれよ、と思います。
と書きかけて少し調べたら、するみたいね、

http://www.golden-slumber.jp/
(すみません)

映画化したら、見に行ってもいいのかなとおもいつつ、やっぱりあまり映画化してもらっても、原作をこえることはなかろう、と期待できないのも事実かと。
(見てから文句はいうことにしよう)

話がそれましたが、楽しめる本。伊坂幸太郎でお薦めするなら、この一冊です。

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

ゴールデンスランバーも二日で読んだので、重力ピエロを読みました。
こちらも、一応、謎解きな話があるのでミステリー的要素はあるかと思いますが、描かれるのは、その事件を軸に、主人公とその兄弟、家族の話が描かれている。
この作家は、どちらかと言えば、ミステリーど真ん中、娯楽!といったものではなく、こういった人を描く話を書きたい人なんだろうな、と他の作品もいろいろ本屋で手に取りながら思ってみた。重力ピエロはそれなりに楽しむことはできた。確かにこの作家のトーンは嫌いではないが、好きかといえばそうでもない。
また、娯楽作品を書いてくれれば、きっと読むだろうが、これ以上、この作家の過去の作品までおいかけようとは思わなくなってきてます。


伊坂幸太郎という作家自身の経歴には興味があり、モダンタイムスでSEの話がでたので気になったのだけど、やはりSEをしていたらしいというのが気になりました。SEしながら、本書いて、作家になったというのは、ちょっと自分には希望の姿かなと。
別に本を書く予定もないわけだけど、こういう話は好きです。
もっとがんばってほしい作家さんです。