monomadoのブログ

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あなたは値札にダマされるのか? 不合理な意思決定にひそむスウェイの法則

あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則

あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則


行動経済学というジャンルがあるらしい。
"不合理な決断"がなぜおこったのかを分析し、意思決定の心理というものについて、いくつかの例から、法則があることを紹介している。

法則は「スウェイの法則」と名づけられており、
例えば

損失の可能性をなんとしても回避しようとする=損失回避の法則

といった法則がその1として説明される。

上記の法則は、優秀なパイロットが起こした飛行機事故を例に説明されており、優秀と評価されており、また優秀なパイロットであるとされていることを誇りに思っているパイロットが、偶発的なささいトラブルによって、損失を回避し、リカバリする
ことを優先し続けるために、誤った判断を繰り返し、泥沼化していく状況が示されている。
要するに、「とにかくリスクを避ける」ということが優先して、そのことだけを考えたために、本来重要である基本的なこと、当たり前のこと、合理的な思考が失われていくということがあるということ。

こういった例がいくつかのケーススタディーに基づいて書かれているが、いまさら新しい研究かどうかといえば、たいしたことはないというのが、読後の印象。
(そもそもなんで買ってまで読んだんだ、と思うが)

確かに経済、政治の決断の世界では、合理的な判断というのは、なかなか困難であると思う。
客観的にみれば、正しいとわかっていることでも、トラブルの渦中で、劇的に変化する状況のまっただなかで判断するというのは、ポジティブな選択を選べるか、リスク回避といったネガティブな選択をするかで、大きく異なることと思う。

僕個人としては、こういった決断にかかわることは、ポジティブな選択を選べればOKで、それが合理的であるかどうかはあまりどうでもいいと思っている。どんなときでも冷静に判断する訓練とかは必要かもしれないが、判断材料も不十分なところで、落ち着いて判断できないことの方が多いものだと思うから。
しかし、できるだけ、落ち着いた状況で判断できるような環境を確保する
努力は必要だと思う。
そもそもそんなピンチ、危機的状況下で判断しなければいけないようなこと自体が問題かと思う。(仕事では)


また、この手の議論というのは、けっこう伝統があり、端的に合理主義の系譜に属すると思われる。

例えば フランシス・ベーコン市場のイドラとかの議論が僕の知る古いもの。
(筋はずれるが、プラトンの洞窟の比喩とか。)

合理的にやれば、全部うまくいくんだぜ、というのは確かに、まだ未開拓の領野については、やるべき。それもしないで、直感とセンスだけでものを語る人にはついていけない
と思う。

合理的な思考をいかに現代の社会に生かすかということの一例として、考え方の練習にはなるかと思う。
ただこの考え方が、誤り、くもりを解消してくれたとしても、その結果、何を選べばいいのかを教えてくれるものではないとは思う。

その先にあるのは、こんどこそ、感性の世界と思うが。